視覚メディアが人々の胃袋に与えた影響も見逃せない。『深夜食堂』のカウンターで繰り広げられる無骨な湯気の向こう側や、『きのう何食べた?』で描かれる日常の丁寧な夕餉の風景。近年、Netflixなどの配信プラットフォームを通じてこれらの作品が繰り返し視聴される中で、視聴者は派手なレストランの皿ではなく、湯気の立つ素朴な器に強烈なノスタルジーと慰縮を見出している。
画面の中で登場人物がすする熱いスープの音は、現代の孤食を寂しさから「贅沢な静けさ」へと塗り替える力を持つ。深夜0時、誰のためでもなく自分のためだけに小鍋を火にかけ、冷凍庫から取り出した数個の餃子を煮込む。それは自炊という労働ではなく、一日をリセットするための小さな儀式に近い。