「家族の失踪事件において、第一発見者や近親者の初期行動には特有の心理傾向が現れる」。多くの刑事事件を分析してきた犯罪心理学者はそう指摘する。
通常、我が子が突如姿を消した場合、親はパニック状態に陥りながらも、近隣を駆け回り、友人宅へ手当たり次第に電話をかけるのが自然な反応とされる。だが本件において、父親が男児の不在に気づいてから110番通報するまでには、約1時間半もの遅れがあった。その間、友人への連絡記録はなく、自宅周辺を探し歩く姿も目撃されていない。
「罪悪感の隠蔽、あるいは現実逃避から生じる計算された沈黙。これらは近親者による隠蔽事案においてしばしば見られる行動心理だ」と専門家は語る。刑事司法の現場では、状況証拠の積み重ねが極めて重要視される。直接証拠がない状況下において、当事者の心理的軌跡と行動の不整合は、有力な捜査のコンパスとなり得る。