オソ18が引き起こした農業被害は、被害頭数66頭(うち死亡32頭以上)という前代未聞の規模に達しました。被害額は数千万円規模にのぼり、地域の酪農家を精神的・経済的な極限状態へと追い込みました。
なぜオソ18はこれほど長期間にわたって捕獲網をすり抜けることができたのか。その理由は、以下の冷徹かつ合理的な襲撃手口にありました。
1. 徹底した夜行性と単独行動
活動時間帯は深夜から未明の完全な暗闇に限定。人通りや車通りのある時間帯には決して姿を現さず、林道や牧草地の際(きわ)を風下から慎重に移動していました。
2. 箱罠や定点カメラの完全な忌避
猟友会や行政が設置した誘引餌付きの「箱罠」には一切近づきませんでした。さらに赤外線センサー付きトレイルカメラの微弱な作動音や光を察知していた形跡があり、カメラの死角を縫うように移動していたことが確認されています。
3. 執着を持たない捕食行動
ヒグマには本来、倒した獲物に土や草を被せて隠し(いわゆる「土饅頭」)、数日間にわたって同じ場所に執着して食べに戻る習性があります。ハンターはこの習性を利用して待ち伏せを行いますが、オソ18は乳房や内臓など柔らかい部位のみを少量食害すると二度と同じ現場に戻らないという、従来のセオリーを覆す行動を徹底していました。
この異様な慎重さによって、熟練のハンター集団「オソ対策班」が張り巡らせた包囲網はことごとく空振りに終わっていたのです。