単語帳を開けば「クジラ=whale」と載っている。間違いではない。だが、英語ネイティブの発音に耳をすませると、地域や年代によって音の切り立ち方が微妙に異なることに気づく。北米の標準的な発音では「ウェイル(/weɪl/)」と発音され、「wail(すすり泣く)」と全く同じ音になる。一方で、スコットランドや米南部の一部の話し手は息を強く吐き出す「フウェイル(/hweɪl/)」の音を残している。こうした音の揺らぎが、ジョークや詩的な表現で巧みに利用されるのだ。
表現の多様性は発音だけにとどまらない。日常会話でよく使われるイディオム「have a whale of a time」は、「最高に素晴らしい時間を過ごす」という意味を持つ巨大な肯定表現だ。「We had a whale of a time at the party!」と言えば、単に楽しかっただけでなく、忘れられないほど大満足したニュアンスが伝わる。逆に「whale on...」というスラングは、「〜を猛烈に叩く」「容赦なく批判する」という意味に変貌する。巨体が水面を激しく叩きつける動作を連想させる、非常に生き生きとした口語表現だ。
さらに、海洋生物としての種類ごとの英名を押さえておくことも、英語学習者にとって大きな武器になる。地球上最大を誇るシロナガスクジラは「Blue whale」、巨大な頭部と深海潜水で知られるマッコウクジラは「Sperm whale」と呼ばれる。また、ダイナミックなジャンプでファンを魅了するザトウクジラは「Humpback whale(背中にコブのあるクジラ)」だ。これらを知っておくだけで、洋書のネイチャー本や旅先での解説文がはっきりと頭に入ってくるようになる。