いま、文化財保護・学術研究の現場では、試料を一切損なうことなく内部構造を可視化する技術が目覚ましい進化を遂げている。高出力X線CTスキャン技術を応用した最新調査により、外側からは見えない内部の樹脂密度分布が三次元マップとして解明された。
香木が長い年月をかけて樹脂を凝縮させていくプロセスや、原産地からの交易ルート、さらには過去の修復・防虫処置の履歴までもが、分子レベルのデータから読み解かれつつある。物質を破壊して調べる時代は終わった。現代の科学者たちは、香木に触れることすらなく、その深部に秘められた1300年前の東南アジアの森の記憶と、シルクロードを渡ってきた古代交易の足跡を鮮やかに炙り出している。