日本のロールケーキ文化は、メディアの進化とともに独自の深化を遂げてきた。昭和から平成にかけてNHK『きょうの料理』が伝えてきたクラシックなバタークリーム仕立てのレシピは、家庭料理の温もりを象徴する定番だった。
その後、空前の堂島ロールブームを経て、生地を楽しむスイーツから「極上生クリームを味わうための器」へとパラダイムシフトが起きた。さらに近年、Netflix『ベイクオフ・ジャパン』のような本格ベイキング番組が配信されたことで、アマチュアの技術レベルは飛躍的に向上。視聴者は単に完成品を眺めるだけでなく、メレンゲのツノの立ち具合やオーブンの熱対流といった専門知識を貪欲に吸収し始めている。
視聴者の目が肥えた結果、家庭で作られるロールケーキも「ただ巻いたもの」から「断面の美しさと口溶けの一体感を極めた工芸品」へと進化を遂げたのだ。