この煮物の源流をたどると、福岡県で古くから慶事や祭りの席に欠かせない郷土料理「がめ煮」に行き着く。博多弁の「がめくり込む(寄せ集める)」に由来するとも、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に兵士がスッポン(川亀)と野山にある根菜を煮込んだことに始まるとも伝えられる。農林水産省が次世代へ継承すべき味として選定する「うちの郷土料理」リストにも堂々と名を連ねる名作だ。
旧筑前国(福岡県北部・西部)の名を冠して全国の食卓へ広まるにつれ、かつての野趣あふれる鼈鍋の面影は、鶏モモ肉の脂と干し椎茸の戻し汁を軸にした洗練された味わいへと姿を変えた。各地の風土に寄り添いながら、日本料理の基本技術である「炒め煮」の代表格として日本人のDNAに深く刻み込まれていった背景がある。