伝統的な薬味の構成要素にも、科学的な必然が潜んでいる。絶対に外せないのがニンニクだ。すりおろしではなく、あえて2ミリ前後の厚みにスライスしてカツオに直接乗せる。噛み締めた瞬間にあふれ出るアリシンが、カツオの血合いに含まれるヘム鉄特有の金属的な後味をまろやかなコクへと瞬時に変換する。
そこへ割り込むのが、初夏から秋にかけて旬を迎えるミョウガの独特な苦味と清涼感だ。シャキシャキとした組織が噛むたびに潰れ、口内をリセットする。ニンニクの力強いパンチをミョウガが受け止め、互いの角を削り合いながら調和を生み出す。この一連の味覚体験があるからこそ、濃厚なカツオの赤身を飽きることなく何切れでも食べ進めることができるのだ。