格闘技ファンの間で長年語り草となっているのが、「世界最強の総合格闘技イベントだったPRIDEがなぜ突然消滅したのか」という謎です。
発端は2006年6月、週刊誌の反社会勢力交際疑惑報道を発端とするフジテレビによる放送契約の一方的な解除でした。年間数十億円にのぼる地上波放映権料とスポンサー収入を失ったDSEは、急速な資金繰りの悪化に直面します。榊原氏は自著や当時の特番インタビューにおいて、「選手たちの活躍の場と世界最高峰の舞台を守るため、あらゆる選択肢を模索した」と苦渋の決断を振り返っています。
そして2007年3月、PRIDEの全資産はUFCの親会社であるズッファ(Zuffa, LLC)へと売却されました。当初は「PRIDE WORLD WIDE」として日本での興行が継続される合意が交わされていたものの、実際にはスタッフの解雇やノウハウの吸収が進み、実質的な解体・消滅へと追い込まれました。
この契約に伴い、榊原氏には「格闘技興行における数年間の競業避止義務(ノンコンピート条項)」が課せられました。彼が一時的にサッカー界(FC岐阜)へと身を投じた背景には、契約上の制約と、一度燃え尽きた興行師としての再起を図るための雌伏の期間という意味合いがあったのです。米国メガ資本の冷徹な契約社会を身をもって体感したこの挫折こそが、現在の強固なRIZIN経営モデルを構築する原動力となっています。