「2月に種を蒔いても、寒さで腐らせるだけではないか」という疑問を抱く家庭菜園初心者は少なくありません。しかし、野菜生理学の観点から見ると、2月播種には暖かくなってから蒔く春まきにはない絶大なアドバンテージが存在します。
第一の理由は害虫の繁殖サイクルとのタイムラグ形成です。アブラムシやコナガ、ヨトウムシなどの害虫は、日中の平均気温が15℃を超え始める4月中旬から爆発的に増殖します。3月下旬や4月に種を蒔いた場合、本葉が数枚出た最も柔らかく無防備な時期に害虫の攻撃が直撃し、株が食害で致命傷を負いかねません。一方で、2月上旬から中旬に保温資材を用いて発芽・生育させた株は、害虫が活動を開始する4月中旬時点で強固なクチクラ層(葉の保護膜)を備えた成株へと育っているため、食害リスクを大幅に抑制できます。
第二の理由は春特有の急激な気温上昇と「トウ立ち(抽苔)」の回避です。特に春ダイコン・レタスの種まきにおいて、春先は気温が上がるにつれて植物が生殖成長へと舵を切り、花芽を伸ばして葉や根の可食部を硬化させてしまいます。2月の低温期から生育をスタートさせることで、春の本格的な高温期が訪れる前に可食部を肥大化させ、みずみずしい状態で逃げ切る収穫が可能になります。
さらに、実をつける期間が長いトマトやナスなどの果菜類においては、夏野菜の先取り育苗が夏の総収穫量を底上げします。種まきから定植サイズ(本葉7〜8枚、第1花房の開花直前)まで育てるには、約70日〜80日の育苗期間を要します。5月のゴールデンウィークに定植適期を迎えるためには、逆算すると2月中旬〜下旬の種まきが生物学的に必須となる計算です。