食事を終えたばかりなのに襲ってくる激しい飢餓感の正体について、臨床現場の医師たちは「胃の物理的なスペースではなく、脳の視床下部にある満腹中枢が正しく刺激されていない状態」と説明します。通常、食事によって血液中のブドウ糖濃度が上昇すると、満腹中枢がそれを感知して摂食行動にストップをかけます。しかし、この精緻な情報伝達ルートに狂いが生じると、胃の中に十分な食物が入っていても脳は「エネルギーが枯渇している」と誤認してしまいます。
代表的な引き金となるのが、糖質の過剰摂取による血糖値の乱高下です。白米や菓子パン、清涼飲料水などの高GI食品を一気に摂取すると、血糖値が急上昇します。すると膵臓から大量のインスリンが分泌され、今度は血糖値が急降下します。小野百合内科クリニックなどの専門機関が指摘するように、この急激な下降局面において脳は強い飢餓シグナルを発信し、実際にはエネルギーが足りているにもかかわらず「偽の空腹感」を生み出すのです。
さらに、精神的プレッシャーが引き起こす自律神経の乱れも見逃せません。強いストレスに晒されると分泌されるコルチゾールは、食欲を刺激する神経伝達物質を活性化させます。「意志が弱いから食べてしまう」と自らを責める必要はありません。この衝動は、体内の化学反応が引き起こしている生物学的な現象です。