2006年の会社法改正直後には、「これからは株式会社でなければ信用されない」「有限会社はすぐに淘汰される」といった言説が一部のメディアやコンサルタントの間で盛んに語られました。しかし、20年が経過した現在でも膨大な数の企業が有限会社のまま看板を掲げ続けています。そこには、現場の実務者だけが知る現在も存続する理由があります。
都内で老舗金属加工業を営む代表取締役は、専門誌の取材に対して次のように胸の内を明かしています。
「リーマンショックの際にも株式会社への移行を勧められたが、踏み切らなくて正解だった。同族経営で後継者も身内。役員の任期書き換えや官報公告に毎年無駄金を払う余裕があるなら、1円でも設備投資に回したい。取引先の商社も信用調査会社も、うちの決算書の中身と製品の精度しか見ていない」
ビジネス現場における信用度と評判の差に関しても、ネット上の一般的なイメージとは異なる逆転現象が起きています。資本金1円から誰でも数日で設立できる現在の株式会社に比べ、現存する有限会社は「最低でも2006年以前から20年以上事業を継続させてきた」という歴史の動かぬ証明になります。
地域密着型の建設業、製造業、老舗飲食店、専門卸売業などでは、「有限会社」の屋号そのものが顧客や金融機関に対する強力な安心材料として機能しています。帝国データバンク等の信用調査においても、設立年数の長さは倒産リスクの低さを測る重要指標であり、「有限会社だから審査で不利になる」という通説は実情に即していません。