日本国内で生きたワニの圧倒的な迫力と生態の真髄を間近で体感できる象徴的施設が、静岡県東伊豆町に位置する熱川バナナワニ園です。1958年の開園以来、温泉熱という天然エネルギーを駆使して熱帯環境を再現し続けています。
同園では、世界に現存するワニ20数種のうち、およそ16種・約140頭を飼育展示しており、単独の飼育施設としては世界トップクラスのコレクション数を誇ります。特に特筆すべきは、野生下での生存数が危機的状況にあるヨウスコウアリゲーターの飼育下繁殖に国内で唯一成功している点です。現場の飼育担当者が長年蓄積した温度管理データや産卵巣作りのノウハウは、国際的な種の保存プロジェクト(IUCNレッドリスト対策)においても極めて貴重な一次資料として還元されています。
温泉蒸気を利用した水温28〜30度の水槽群では、水底で静止する省エネ行動や、瞬時に獲物を捕らえる驚異的な瞬発力を観察できます。野外の生息地へ赴撃することが困難な一般市民や研究者にとって、生態系のリアルを安全かつ体系的に学べる第一級のフィールドミュージアムとして機能しています。