藤原拓海が乗るスプリンタートレノの右ドアに堂々とペイントされた「藤原とうふ店(自家用)」という文字。この「(自家用)」という表記は、単なるデザインのアクセントではなく、当時の日本の道路運送車両法に基づいた極めてリアルな設定です。
劇中のハチロクは、早朝の豆腐配達業務と兼用されている小型貨物登録、いわゆる「4ナンバー(商用車登録)」の車両という設定が存在します。昭和から平成初期にかけての法規(道路運送車両の保安基準)では、事業用トラック(緑ナンバー)と自家用貨物車(白ナンバー)を外見から明確に識別するため、車体の見やすい位置に事業者名(屋号)と「自家用」の文字を表示することが法的に義務付けられていました。
原作者のしげの秀一氏は、群馬の山間部で家業の手伝いとして使われていた商用ハチロクのリアルな空気感を再現するため、この法規上の表記をそのまま作画に落とし込みました。現在では自家用小型貨物における表記義務は大幅に緩和・廃止されていますが、90年代当時の空気感を色濃く残す見事なリアリズムの結晶と言えます。