病院で処方されるPPIやP-CABは、強力に胃酸の分泌を止める優れた薬剤です。しかし、医療機関の受診者の間で「薬を飲んでいるのに症状がぶり返す」「酸っぱい液は上がってこないのに喉がつまる」という不満が後を絶ちません。逆流性食道炎の治療において漢方を併用しても効かない理由や西洋薬で取りこぼされる病態には、消化器内科学で解明が進む3つの明確な要因が存在します。
第1の要因は、胃の運動機能の低下(胃排出遅延)です。胃酸の分泌をいくら抑えても、胃から十二指腸へ食べ物を送り出す蠕動運動が弱っていれば、胃内に停滞した内容物が食道へ押し上げられてしまいます。第2の要因は、内視鏡で粘膜のただれが見られない「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」に代表される、食道粘膜の知覚過敏です。ごく微量の胃酸や弱酸性の逆流でも激しい痛みや違和感を感知してしまう状態であり、単純な胃酸過多の改善だけでは痛みの遮断ができません。
そして第3の要因が、心理的・肉体的過緊張から生じる自律神経の失調です。胃腸の働きをコントロールする副交感神経の機能が低下すると、食道下部括約筋(胃からの逆流を防ぐ弁)が緩みやすくなります。西洋薬が「酸を止める」単一のアプローチであるのに対し、漢方薬は「胃の運動を促す」「粘膜の血流を整える」「知覚過敏を鎮める」「ストレスを緩和する」という複合的な経路でアプローチするため、既存の治療で壁にぶつかった患者にとってブレイクスルーとなり得ます。