あがたまつりが全国的に「暗闇の奇祭」として好奇の目を集める最大の要因は、深夜に行われる梵天渡御(ぼんてんとうぎょ)の特異な儀礼様式と、それに付随して語り継がれてきた都市伝説的な噂にあります。
深夜23時を回ると、警察や実行委員会の指導のもと、あがた通り周辺の街灯、店舗の電飾、民家の照明に至るまですべての明かりが落とされます。漆黒の闇の中、白装束をまとった地元の担ぎ手(男衆)によって担ぎ出されるのが「梵天」と呼ばれる神輿です。梵天は球状に削り出された神聖な依り代であり、暗闇の中を激しく回転し、揺さぶられながら町内を巡行します。
なぜ、一切の明かりを消さなければならないのか。これには明確な神道学的・民俗学的な理由が存在します。
日本の古来の神道信仰において、神霊が社殿から神輿へとお遷りになる「御霊移し(みたまうつし)」や、夜間に土地を巡行して穢れを祓う神事は、人間の肉眼で直接目にしてはならない神聖不可侵の秘儀とされてきました。東京・府中の大國魂神社で行われる「くらやみ祭」と同様に、神の尊厳と畏怖を守るためにすべての人工光を排除するのが本来の姿です。
一方で、インターネット上の掲示板や一部のオカルト系メディアでは、「かつて暗闇に乗じて男女が交わる夜這い(種もらい)の風習があった」という俗説がまことしやかに語られることがあります。この点について民俗学的な調査データを紐解くと、かつての農村社会における若者組の通過儀礼や、豊穣・子孫繁栄を祈る生殖儀礼の解釈が、昭和中期以降の好事家や大衆雑誌によってセンセーショナルに歪曲・誇張された側面が極めて強いことが分かります。
現在斎行されているあがたまつりは、地域の安寧と子孫繁栄、五穀豊穣を純粋に祈願する格式高い神事であり、不敬な行為や無秩序な混乱を許容する場ではありません。歴史ある祭礼の真の姿は、闇の中に宿る神性への厳かな畏敬の念に他ならないのです。