外来を受診した際、医師から「このまま入院してください」と宣告されるか、「自宅で安静にしてください」と指示されるかの境界線はどこにあるのでしょうか。日本呼吸器学会が定める成人市中肺炎診療ガイドラインでは、「A-DROPシステム」と呼ばれる客観的スコアリングを用いて重症度を即座に判定しています。
A-DROPスコアでは、年齢(男性70歳以上・女性75歳以上)、脱水状態、呼吸不全(SpO2が90%以下またはPaO2が60Torr以下)、意識障害、血圧低下(収縮期90mmHg以下)の5項目をチェックします。1つでも該当すれば中等症以上と判断され、入院の検討対象となります。
厚生労働省の「患者調査」および主要急性期病院のDPCデータによると、肺炎入院期間の平均日数は、一般的な成人中等症患者で約8〜12日間となっています。入院治療では、最初の3〜5日間にわたって抗菌薬の点滴投与を行い、体温や炎症反応(CRP値)、動脈血酸素飽和度が安定した段階で内服薬に切り替え、退院へと向かいます。
一方、高齢者の肺炎完治期間と重症化リスクはこれとは全く異なる軌跡を辿ります。75歳以上の後期高齢者の場合、平均在院日数は20日〜30日前後に跳ね上がります。高齢者は典型的な発熱や激しい咳が出にくく、「何となく元気がない」「食欲が落ちている」「傾眠傾向にある」といった非典型的な初期症状で見落とされがちです。発見が遅れて肺炎が重症化すると、肺の感染自体は鎮静化しても、長期臥床に伴う廃用症候群や認知機能の低下を招き、自立歩行での退院が極めて困難になる現実があります。