「礼服(ブラックスーツ・略礼服)を着て行くべきなのか、手持ちのビジネススーツで十分なのか」という疑問は、卒業式を控えた父親が最も直面しやすい分岐点です。大手アパレル企業や百貨店が実施した保護者アンケート調査の蓄積データを分析すると、公立校の卒業式において礼服を着用して参列した父親の比率は、全体の約8%から12%程度に過ぎません。実に8割以上の父親がダークカラーのビジネススーツを選択しています。
なぜ礼服を着る父親がこれほど少数派になったのか。その理由は「会場における役割の違い」にあります。礼服(漆黒の略礼服)に白ネクタイという装いは、PTA会長や自治体議員、地域の名士といった「来賓」や、校長・教頭などの「式典運営側」が着用するケースが大半です。一般の保護者がこの装いで出席すると、受付で来賓と間違えられたり、保護者席の中で一人だけ浮いてしまったりする現象が起きます。
礼服とビジネススーツの決定的な違いは「黒の深さ(染色の度合い)」と「光沢感」です。ビジネス用の黒スーツは光を反射してややグレーがかって見えますが、礼服は光を吸収する特殊な濃染加工が施されており、並んだ瞬間に違いが一目で分かります。手持ちのビジネススーツがダークネイビーやチャコールグレーであれば、あえて礼服を引っ張り出す必要は全くありません。
なお、手持ちのスーツを格上げしたい場合に威力を発揮するのが、ベストを取り入れたスリーピーススーツのスタイルです。ジャケットを脱ぐ機会は少ないものの、胸元に立体感と重厚感が生まれ、通常のツーピーススーツに比べて一気にフォーマル度が高まります。防寒対策としても優れており、春先の冷え込む体育館でもスマートに過ごせる合理的な選択肢です。