食偏のハードルをクリアした後に待ち受けるのが、右側のつくり「官」である。ここにも、ネット上でまことしやかに語られる俗説や、誤った先入観が潜んでいる。
「官」の書き順は、漢字全体の10画目からスタートする。まず10画目は「うかんむり(宀)」の頂点にある縦の点。11画目は左の短い縦画、12画目は横から鋭く折れて内側へ向かう「わかんむり」の右肩である。ここで重要なのは、うかんむりの横幅をつくりの基準幅と一致させることだ。これが広すぎると頭でっかちになり、狭すぎると窮屈な印象を与える。
そして、ネット上で時に「一筆書きでぐるりと回す」と誤解されるのが、内部にある二つの四角(コ)の筆順である。ここは決して一画で描くものではない。13画目の縦棒、14画目の横折れで上の四角を形作り、続いて15画目の縦棒、16画目の横折れで下の四角を構成する。
漢字指導サイト「かくなび」等の解説でも強調されている通り、二つの「コ」のうち、下段をわずかに大きく構えることが最大の美文字ポイントである。人間は視覚的に下部が広い台形構造に対して安定感と格式を感じる認知特性を持つ。上下を全く同じサイズにしてしまうと、錯視によって上が重たく見え、文字全体が前のめりに倒れそうな不安定さを生んでしまう。この上下の比率設計こそが、プロとアマチュアを分かつ決定的な境界線となる。