気象庁および防災科学技術研究所の公式発表資料によると、N-netの運用は綿密な2段階ステップを踏んで進められてきました。
第1段階として、2024年11月21日に「N-net沖合システム」の水圧計データが気象庁津波警報システムへ先行投入されました。そして2026年、防災関係者が固唾をのんで見守るなか、2026年3月12日12時をもって「沿岸システム」の津波・地震観測データが本格統合されることが確定しました。
この2026年3月の連動開始によって何が決定的に変わるのか。それは、「気象庁津波警報(第1報)における震源推定の飛躍的精度向上」と「緊急地震速報の極小タイムラグ化」です。
これまで沖合深くで発生したプレート境界型地震では、初期微動(P波)を陸上地震計が捉えるまでに10〜20秒以上の遅れが生じ、断層破壊の広がりや規模(マグニチュード)を正確に割り出すまでに時間を要していました。N-netの36地点におよぶ海底地震計・津波計が24時間体制で気象庁へ直接データを送り込むことで、地震発生から最初の警報発令に至るアルゴリズムの信頼性が飛躍的に向上します。
さらに見逃せないのが、南海トラフ臨時情報(巨大地震警戒・巨大地震注意)の判定に対する貢献です。南海トラフ臨時情報は、想定震源域内でM6.8以上の地震やプレート境界での異常な「ゆっくりすべり(スロースリップ)」が観測された際に招集される検討会を経て発表されます。海底の超高精度傾斜計・水圧計データがリアルタイムに手に入ることで、プレート境界で現在進行形で何が起きているのかを科学的に裏付ける精度が一段上の次元へと引き上げられたのです。