日本において「ホモ」という語がこれほどまでに強烈な差別性を帯びるに至った主因には、昭和から平成にかけての民間放送テレビ局によるお笑いバラエティの演出手法があります。
その象徴的な事例が、フジテレビ系列『とんねるずのみなさんのおかげでした』で誕生した人気キャラクター「保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)」です。濃い青ひげにピンクの頬紅を塗り、男性に対して異常な執着を見せながら奇声をあげるその描写は、1980年代後半から1990年代にかけて爆発的な視聴率を記録しました。しかしその裏で、全国の学校現場や職場で同性愛傾向を疑われた少年たちが「ホモ」「保毛尾田」と囃し立てられ、深刻ないじめや自殺未遂に追い込まれる悲劇が続発しました。
この問題の根深さは、2017年9月に放送された同番組の30周年記念特番で露呈しました。番組内で1989年当時の姿そのままに保毛尾田保毛男が登場した際、Twitter(現X)をはじめとするネット空間は大炎上し、当事者団体から激しい抗議声明が提出されました。当時のフジテレビ社長が定例記者会見で「不快な思いを抱かれた方々にお詫びする」と謝罪する事態へと発展した一件は、メディアが長年撒き散らしてきた「笑いものとしての同性愛者像」に対する決定的な引導となりました。
歴史を遡れば、1990年には「動くゲイとレズビアンの会(アカー / OCCUR)」が東京都の宿泊施設「府中青年の家」で受けた差別的取り扱いをめぐり損害賠償請求訴訟を提訴。1997年の東京高裁判決(確定)で行政側の差別が認定されるなど、当事者たちは長い歳月をかけて「見世物や奇異の対象」として消費される構造に抗議し続けてきました。テレビが植え付けた「ホモ=笑っていい道化」という認知の歪みこそ、私たちが今なお解毒しなければならない最大の病巣です。