動画共有プラットフォームやSNS上で活動する弾き語り配信者たちの練習プロセスを検証すると、多くの人がメランコリーキッチンのTAB譜を忠実に再現しようとしてリズムの迷宮に迷い込んでいる実態が見えてきます。
市販のバンドスコアや採譜TAB譜は、原曲のマルチトラック(ボーカル、複数のエレキギター、ベース、ドラム、パーカッション)の音を1本のギターに詰め込もうとする傾向があります。その結果、「ハイポジションの単音フレーズを弾きながら同時にルート音を鳴らし、直後にローコードへ飛ぶ」といった曲芸のような運指が要求され、肝心のリズムが失速してしまうのです。
音楽教室の講師らへのヒアリング調査でも、「弾き語りにおいて最優先すべきは、伴奏としてのタイム感の維持」という見解で一致しています。米津玄師本人のライブパフォーマンスを見ても、複雑なアルペジオを完コピするのではなく、歌のダイナミクスに合わせてストロークのダイナミクスを大胆に切り替えています。TAB譜の細部に縛られすぎず、コードの骨組みをしっかり捉えて右手のグルーヴを途切れさせない意識が、演奏の完成度を分ける決定的な要素です。