ハイローラーの世界を語る上で欠かせないのが「コンプ(Comp:Complimentaryの略)」と呼ばれるカジノVIP特典です。数日間の滞在で数百万円から数千万円相当のスイートルーム宿泊費、ミシュラン星付きレストランでのディナー、プライベートジェットのチャーター費が「無料」になる光景は、一般の感覚からは奇怪に映ります。
しかし、カジノコンプ仕組みは慈善事業ではなく、冷徹な数理モデルに支えられた営業経費です。カジノ経営の根底には「ハウスエッジ(控除率)」という統計学的優位性があります。たとえばバカラの控除率は約1.06%〜1.24%です。一見するとカジノ側の取り分はわずかに見えますが、VIPホストが重視するのは「プレイヤーが滞在中に回した累計ベット総額(ターンオーバー)」です。
仮に1回100万円を賭けるプレイヤーが、1時間に60回ゲームを行い、3日間で計15時間プレイした場合、総ベット額は9億円に達します。控除率を1.2%と仮定すれば、カジノの理論上の期待収益は1,080万円です。カジノ側はこの期待値の20%〜40%(この例では約200万〜400万円)をコンプ費用として予算計上します。1泊50万円のスイートや数十万円のワインを振る舞ったとしても、長時間テーブルに縛り付けてゲームを継続させさえすれば、確率論の法則によってカジノ側が確実に利益を回収できる設計になっているのです。