毛孔性苔癬が生じる明確なトリガーについて、日本皮膚科学会の見解や各種医学論文では、常染色体顕性(優性)遺伝の傾向が極めて強いことが示されています。両親のいずれかが若い頃に同様のザラつきを経験していた場合、およそ50%の確率で子どもにも体質が受け継がれます。アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬(ぎょりんせん)、肥満傾向を持つ人に合併しやすいことも統計的に判明しており、体質的な角化傾向がベースにあります。
ここで多くの患者を悩ませるのが、「毛孔性苔癬は10代をピークに、20代後半から30代になれば自然に完治する」というネット上で拡散された俗説です。この言説は医学的に“半分正しく、半分は誤り”と言わざるを得ません。
確かにホルモンバランスの変化に伴い、毛穴の角栓そのものの盛り上がりは加齢とともに縮小・平坦化していく傾向が見られます。しかし、臨床現場の実態調査では、「突起は平らになったものの、長年の毛穴の炎症によって生じた赤褐色の日焼けのような色素沈着だけが背中一面に残ってしまった」という30代〜40代の切実な相談が急増しています。
自然治癒の神話を過信し、無防備に紫外線に晒したり、気にして手で掻きむしったり、ナイロンタオルで擦り続けるといった誤った刺激を与え続けると、毛穴の周囲にメラノサイトが活性化し、炎症後色素沈着(PIH)が真皮層近くまで固定化します。「いつか消えるから」と放置することが、かえって将来的な難治性シミを生み出す温床になっている事実は重く受け止める必要があります。