近年の国際世論において、コロナ対応と並び最大の火種となっているのが、WHOが進めるパンデミック条約(パンデミック合意)とテドロス体制の動向です。
この協定の根底にある理念は、次の世界的危機が発生した際に、ワクチンや治療薬を先進国が買い占めることなく途上国へも公平に分配し、病原体の初期ゲノム情報共有を義務づけるというものです。テドロス氏はこれを自身の任期における最重要のレガシーと位置づけ、強烈な危機感を持って各国に早期合意を働きかけてきました。
しかし、この協定を巡っては欧米各国や日本国内でも激しい論争と警戒感が巻き起こりました。主権侵害や強制接種につながるのではないかという懸念、知的所有権の保護を優先したい製薬大国と無償供与を求める途上国との利害対立が先鋭化し、草案の文言修正を巡って激しい綱引きが続いています。
ネット上では「WHOによる世界統一政府の樹立」「国家主権の強奪」といった過激な言説も飛び交い、日本でも反対集会が開催されるなど社会現象化しました。WHO側は「加盟国の主権を侵害する権限はなく、ロックダウンやワクチン義務化を強制する条項は存在しない」と公式に火消しを続けていますが、一度失われた信頼を回復するのは容易ではなく、条約交渉の停滞はテドロス氏の政治的求心力にも影を落としています。