生ハムの原木を美味しく味わうための最大のハードルは、カッティング技術です。切り方ひとつで口当たり、塩味の感じ方、脂の溶け具合が劇的に変化します。専門メディアの現場検証やコルタドール(生ハムカット職人)の基本手順に基づき、失敗しないスライスの手順を整理しました。
生ハムを安定して切るためには、ハモネロ専用台への固定が絶対条件です。不安定な状態で作業を行うと、均一に切れないだけでなく、刃が滑って重篤な怪我につながる危険性があります。台に固定したら、以下のステップでカットを進めます。
- 足首部分へのV字カット:最初に関節付近の硬い皮と腱に包丁で深めの切れ込みを入れ、作業の基点を作ります。
- 外皮と酸化脂(黄色い部分)のトリミング:食べる部分の周囲だけ、黄色く酸化した外皮と脂を削ぎ落とします。削りすぎると内部の乾燥を早めるため、その日に食べる面積分だけを剥くのが鉄則です。
- 専用スライスナイフの運用:刃渡りが長く、柔軟性(しなり)のある生ハムナイフ切り方の基本は、「力を入れず、刃のストローク全体を使って引くように削る」ことです。
- 向こう側から手前へ平行にスライス:断面が常に水平(ボートの底のように凹まない状態)を保つよう、向こう側から手前に向かって極薄(向こう側が透けて見える程度)に削ぎ取ります。
骨付き原木の場合、メインの赤身である「マサ(太腿部分)」、引き締まって塩味の強い「バビージャ(下腿部分)」、旨味が凝縮した「プンタ(先端部分)」と、部位ごとに異なる風味のグラデーションを楽しめる点こそが、スライスパックでは決して味わえない原木ならではの醍醐味です。