供花村を実質的に支配する後藤家において、当主以上の畏怖を集める「あの人」の正体は、前当主である後藤銀(ごとう ぎん)の実兄「後藤白銀(ごとう しろがね)」です。村の奥深くに隔離され、まるで神仏か猛獣のように扱われてきた彼は、突如として現れた化け物ではなく、後藤家の血脈そのものから生まれた存在でした。
白銀が生まれた時代、供花村は深刻な飢饉に見舞われていました。極限状態の中で我が子を生かすため、母親がやむを得ず人肉を口にさせ、白銀自身も生き延びるために人の肉を喰らい続けたことが狂気の始まりです。この出来事を契機に、後藤家では「人肉を喰らうことで強靭な生命力を得る」という歪んだ選民思想と信仰が定着していきました。
後藤家の家系図を整理すると、白銀と銀の兄妹関係を頂点として、銀の血を引く後藤恵介(現在のリーダー格)や洋介、睦夫といった現世代へと呪縛が受け継がれている構造が浮き彫りになります。白銀は後藤家の「力と恐怖の象徴」として祭り上げられる一方で、人間としての日常や尊厳を一切奪われ、地下牢のような環境で人肉を与えられ続けるだけの「生き神」として幽閉されてきたのです。