呼吸をした瞬間に胸の一部が激しく痛むと、誰しも心筋梗塞や狭心症といった生命に関わる心臓病を想起しがちです。しかし、プレコーディアルキャッチ症候群(PCS)は、心筋や冠動脈などの心臓組織そのものには一切の異常がない純粋な胸壁由来の症候群です。
英語の「Precordial(前胸部=心臓の前あたり)」と「Catch(引っかかる・つかまれる)」に由来するこの病態は、1955年に医学論文で体系化されて以来、小児科や総合診療の臨床現場で広く認知されてきました。代表的な特徴は以下の通りです。
痛みの発生源は、肺を覆う「壁側胸膜」や肋骨の間を走る「肋間神経」の先端部分が、胸壁の内側で一時的に挟まれる(キャッチされる)、あるいは微小な摩擦を起こして刺激されることだと考えられています。息を吸い込んで胸郭が広がると神経への圧迫が強まるため、「息を吸うと胸が痛い」という特徴的な症状が現れます。
成長期にある子供や若者(6歳〜20代前半)に好発しますが、成人であっても日常的に浅い呼吸や悪い姿勢を続けていると発症頻度が高まります。