七松小平太を語るうえで欠かせないのが、6年ろ組で同室を務める中在家長次との関係性です。二人の間柄は、ファンの間でも「最高の相棒」として神聖視されています。
長次は普段ほとんど言葉を発さず、「もそもそ」と呟く程度で、表情も滅多に崩しません。一見すると最も意思疎通が難しそうな長次ですが、小平太は長次の「もそもそ」を完全に通訳し、長次の僅かな表情のニュアンスから心情を完璧に察知します。逆に長次もまた、小平太が暴走して塹壕を掘りすぎた際には縄標を使って的確に回収し、静かにブレーキをかけます。
心理学的に見れば、この二人は「多動的直感型」と「内向的観察型」の完璧な補完関係にあります。互いの心理的バウンダリー(境界線)を侵害することなく、長年の共同生活と死線を共にした忍者修行を通じて培われた信頼関係は、言葉による説明を一切必要としません。静と動、沈黙と爆音という極端なコントラストでありながら、並び立つだけで絶対的な安心感をもたらすコンビネーションは、ろ組の象徴となっています。
一方で、体育委員長としてのリーダーシップにも独自の美学があります。体育委員会には、平滝夜叉丸(4年)、次屋三之助(3年)、皆本金吾(1年)らが所属していますが、小平太の指導は苛烈そのものです。「体育委員会マラソン」と称して果てしない長距離走を敢行し、時には山を越え、谷を越えて後輩たちを限界まで追い込みます。
しかし、後輩たちは小平太を恐れつつも、心の底から敬愛しています。なぜなら、小平太は決して後輩に理不尽な命令を押し付けるのではなく、「自分自身が常に先頭を走り、最も過酷な負荷を自らに課している」からです。金吾がピンチに陥れば真っ先に盾となり、滝夜叉丸の自惚れも豪快に受け流して成長を促す。言葉ではなく背中で語るその指導力は、現代の組織論におけるサーバント・リーダーシップ(奉仕型リーダーシップ)の原型とも言える風格を帯びています。