育児中の保護者にとって最大の関門が、保育園や幼稚園における「37.5℃の壁」です。朝の検温で37.4℃、胸をなでおろして登園させたのも束の間、出社直後に「お子さんが37.6℃のお熱です。すぐにお迎えをお願いします」と告げられる――SNSやコミュニティ掲示板には、親たちの悲痛な叫びが溢れています。
なぜ保育施設は頑なに37.5℃で線引きを行うのでしょうか。その根拠は、厚生労働省が公表している「保育所における感染症対策ガイドライン」にあります。同ガイドラインにおいて、感染症の拡大を防ぐスクリーニング基準として感染症法の定義に沿った「37.5℃」が明記されているためです。
小児科専門医は子どもの発熱特性について以下のように解説します。
「乳幼児は自律神経や体温調節中枢が未発達なため、厚着や室温、直前まで泣き叫んでいたといった外来要因だけで、体温が簡単に37度台後半まで跳ね上がります。現場の保育士も杓子定規に排除したいわけではありません。しかし、集団生活空間における乳幼児の感染力と重症化リスクは成人の比ではないため、法律と国の指針に則った37.5℃を境界線とせざるを得ないのです」
小児の発熱において本当に重要なのは、体温計の数字以上に「全身状態の観察」です。日本小児科学会の指針でも、以下の3つのチェックポイントが強調されています。
- 機嫌と活気:熱が高くても、目が合い、あやせば笑い、お気に入りのおもちゃに興味を示すか。
- 水分摂取と排尿:母乳やミルク、経口補水液を少しずつでも飲み込めているか。半日でしっかり排尿があるか。
- 呼吸の状態:胸がペコペコとへこむような陥没呼吸をしていないか、ゼーゼー・ヒューヒューという異音がないか。
また、登園再開の目安として厚労省ガイドラインでは「解熱後24時間以上が経過し、普段の食事が摂れること」を基本原則としています。朝熱が下がったからと無理に登園させると、夕方に再びぶり返してかえって回復を遅らせることになります。