『もののけ姫』のクライマックス、人間によってシシ神の首が切り落とされ、森の命は一度完全に枯死します。シシ神が倒れ、再生の風が吹き抜けた後、新緑の草原となった丘の上で、たった1匹のこだまが首を「カタッ」と鳴らすラストカット。この1匹について、長年ささやかれてきた「後の『となりのトトロ』になる」という都市伝説が存在します。
結論から言えば、この話はネット上の憶測ではなく、宮崎駿監督本人が制作終盤にスタッフへ明かした正真正銘の構想です。
スタジオジブリの美術監督を務めた男鹿和雄氏の回想録や当時の制作ドキュメンタリーによると、ラストシーンの作画作業中、宮崎監督は男鹿氏に対して「ラストにこだまを1匹だけ残してくれ。あれが何百年も生き延びて、やがて毛が生えてトトロになるんだよ」と語りかけました。過酷な戦いの果てに文明と自然の衝突を描ききった宮崎監督にとって、あの生き残りのこだまは、遥かな時を経て昭和の森に現れるトトロへと繋がる「生命の連続性の象徴」だったのです。
シシ神の森という太古の原生林が失われても、自然の精霊は形を変えて生き続ける。この裏設定を知ることで、『もののけ姫』という壮大な神話劇と『となりのトトロ』という現代の寓話が一本の線で結ばれることになります。