日本神話の根幹をなす天の岩戸あらすじを紐解く上で、欠かせないのがアマテラスとスサノオの姉弟関係です。高天原(たかまがはら)を統べる姉のもとへ、追放処分を受けた弟スサノオが訪れたことから悲劇の歯車が回り始めます。
当初、邪心がないことを証明する「誓約(うけい)」を経て一度は身の潔白を示したスサノオでしたが、勝利に驕った彼は次第に凶暴性を露わにしていきました。神田の畔(あぜ)を壊して溝を埋め、神聖な大嘗祭の御殿に糞尿を撒き散らすなど、農耕と祭祀を重んじる共同体の秩序を根底から破壊します。
アマテラスは当初、「酒に酔って粗相をしたのだろう」と弟を庇い続けました。しかし、機織り小屋(忌服屋)で神に捧げる衣服を織っていた際、スサノオが屋根を破って生きた馬の皮を逆剥ぎにして投げ込むという凄惨な事件が発生します。これに驚いた機織り女が命を落とす事態に至り、天照大御神が隠れた理由である「極限の絶望と恐怖」が決定打となりました。
最高神が岩戸の中に籠もって固く扉を閉ざした瞬間、高天原も葦原中国(地上世界)も完全な暗闇に閉ざされます。太陽の光を失った世界では悪神たちの声が夏の蝿のように満ち溢れ、あらゆる災厄が一斉に発生する未曾有のパニックに陥りました。この描写は、古代人にとって太陽の消失がどれほど壊滅的な恐怖であったかを克明に物語っています。