本館に足を踏み入れた者が息を呑むのは、吹き抜けロビーを支える巨大な秋田杉の丸太柱だ。昭和14年、幻となった東京オリンピックの外国人観光客を迎えるために建てられたこの建築には、東北三県から集められた宮大工80人の技が隅々まで宿る。
一本一本表情の異なる丸太。釘を一切使わずに組まれた格天井。手斧(ちょうな)で削り出された波状の床板は、素足で歩くと木の温もりと職人の息遣いが直に伝わってくる。80年以上の歳月を経てなお狂いのない梁を見上げていると、大量生産のモダンリゾートでは決して味わえない、建築そのものが放つ重厚な生命力に圧倒される。