善通寺中之町の通りに佇む熊岡菓子店は、昭和初期のレトロな看板と木製ショーケースが今なお現役で使われている生きた文化財のような店舗です。店内に漂うのは、焼き菓子特有の甘く香ばしい香りと、どこか懐かしい生姜(ショウガ)の爽やかな匂い。看板商品である善通寺名物カタパンは、量り売り(100g単位)で購入するスタイルが守られています。
もっとも硬いとされる「石パン」を手に取ると、親指の爪ほどのサイズでありながら、指先から伝わる密度と重厚感はまさに「小石」そのものです。不用意に奥歯で噛み砕こうとすると、歯科医師も警告するほどの衝撃が走ります。実際の購入者や地元住民の間では「噛むものではなく、口に含んで生姜糖の衣をゆっくり溶かしながら楽しむもの」という共通認識が定着しています。
舌の上で転がしていると、表面にコーティングされた生姜風味の砂糖がじんわりと溶け出し、素朴で奥深い小麦の甘みが口いっぱいに広がります。この強烈な硬さと上品な甘みのギャップこそが、多くのリピーターを惹きつけてやまない最大の魅力です。