ADHDとASDの最大の違いは、行動を生み出す「脳内のメカニズム」と「関心の向かう方向」にあります。臨床現場の専門医への取材によると、ADHDは脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの分泌・受容の偏りによって、注意の持続や衝動のコントロールを担う前頭前野の実行機能が低下しやすいとされています。対してASDは、脳の広範な神経ネットワークの結合様式に特徴があり、社会的コミュニケーションの障害と限定された行動・興味の反復(強いこだわり)を中核症状とします。
この根本原因の差異は、日々の行動パターンに極めて対照的な形で現れます。典型的な例が不注意と強いこだわりの違いです。ADHDの不注意は「注意の焦点が定まらず、周囲の刺激に気を取られて別の対象へ次々に移ってしまう」現象です。一方で、ASDの集中は「特定の関心事や独自のルーティンに対して過度に没入し、外部からの切り替えが著しく困難になる(過集中・固執)」という特性を持ちます。
また、衝動性と感覚過敏の根本原因にも明確な境界が存在します。ADHDの衝動性は、報酬系回路の特性から「待つことが苦痛」「思いついたら即座に行動しないと気が済まない」という内的な衝動制御の難しさに起因します。一方、ASDに見られるパニックや突発的な拒否反応は、聴覚や触覚などの感覚過敏(感覚処理の偏り)によって過負荷がかかった結果生じる防衛反応であることが多く、外見は似ていても心理的プロセスは根本から異なっています。