標高3776mという数値は、登山者にとって単なる記号ではなく、過酷な物理的環境を意味します。登山口となる富士山五合目の標高はルートごとに大きく異なります。
- 富士宮口五合目:標高2400m(標高差:約1376m・最短ルート)
- 吉田口五合目:標高2305m(標高差:約1471m・最も人気のルート)
- 須走口五合目:標高2000m(標高差:約1776m・豊かな樹林帯と砂走り)
- 御殿場口新五合目:標高1440m(標高差:約2336m・最も過酷なロングコース)
どのルートを選択しても、1300mから2300m超の急激な標高差を自力で登り詰めることになります。ここで登山者を苦しめるのが、富士山山頂の気圧と気温の急激な変化です。
気象庁や環境省のデータによると、標高が100m上がるごとに気温は約0.6℃低下します。真夏の平地(海抜0m)が35℃の猛暑日であっても、山頂(3776m)の気温は約22℃以上低く、計算上は12〜13℃程度となります。さらに強風が吹き荒れる山頂では風速1m/sにつき体感温度が約1℃下がるため、夜間や早朝のご来光待ちでは体感温度が氷点下に達することも珍しくありません。
気圧の低下も深刻です。山頂の気圧は海面の約1013hPaに対して約640hPa(約3分の2)まで低下し、空気中の酸素濃度も約3分の2に減少します。五合目到着直後に休息を取らず急激に登り始めると、血中酸素濃度が急低下して高山病(頭痛、吐き気、強烈な倦怠感)を発症するリスクが極めて高くなります。