ネット上のコミュニティやSNSでは、「羽織の背中の折り目が気になる」「高価な絵羽織(けばおり)の柄が割れてしまいそう」という不安の声が頻繁に投稿されています。着物のお手入れを専門とする京都の悉皆職人は、次のように現場の実情を明かします。
「お客様から『背中の絵柄に折り目がつくのが嫌だから、背中心を折らずに適当に丸めて保管していたら、全体が波打って着られなくなった』というご相談をいただきます。結論から言えば、着物は直線の集合体であり、正しい折り目に沿って圧力が均等にかかる分には、スチームプレスですぐに消える自然な折り目にしかなりません。一番危険なのは、自己流で中途半端な斜めのシワやシボを作ってしまうことです」
特に背面に一枚の絵画のような模様が描かれた「絵羽織の折り目」に関しては、背中心の縫い目でしっかりと折るのが正解です。縫い目自体が生地の補強線となっているため、縫い目上で折る限り柄が破損することはありません。どうしても折りジワの定着を防ぎたい美術工芸品レベルの逸品羽織については、二つ折りにする段差部分に丸めた和紙を1本挟み込むだけで、布の角が立たずふんわりと保形されます。