三億円事件の捜査を決定的に迷走させ、少年Sとその遺族を永久の苦痛に縛り付ける原因となったのが、あまりにも有名な「三億円事件のモンタージュ写真」です。
白バイ隊員風のヘルメットを被り、鋭い眼光でこちらを見つめるあの顔写真は、目撃者の証言を合成して描かれたものと信じられていました。しかし、1970年代半ばになって驚くべき事実が暴露されます。あの写真は、警察が以前に別の補導事案で撮影していた少年S自身の顔写真をベースにして作られた合成写真だったのです。
犯人と酷似していると決めつけた特捜本部が、少年Sの顔をそのまま当てはめてモンタージュを作成し、全国へ数百万枚単位で配布した結果、全国から寄せられた数十万件の目撃情報は「少年Sに似た人物」だけに偏ることになりました。真犯人の正体から目を逸らす結果を招いたこの致命的な失策は、1974年に警察庁がモンタージュ写真の配備を公式に中止・回収する事態へと発展しました。