なぜサウザーは、ここまで過剰に「退くこと」「媚びること」「省みること」を拒絶したのでしょうか。その真相は、彼の血塗られた生い立ちと、南斗鳳凰拳の過酷な掟にあります。
身寄りのない孤児だったサウザーは、先代の南斗鳳凰拳伝承者であるオウガイに拾われ、厳しくも深い愛情を注がれて育ちました。孤児であったサウザーにとって、オウガイは武術の師であると同時に、世界で唯一無二の父親そのものでした。サウザー自身もその大きな愛に応えるべく、懸命に修行に励んでいたのです。
しかし、南斗鳳凰拳は一子相伝の宿命を背負う流派。伝承者交代の儀式において、新伝承者は目隠しをした状態で襲い来る刺客を倒さねばなりませんでした。15歳を迎えたサウザーは、目隠しをしたまま渾身の一撃を繰り出し、見事に刺客の息の根を止めます。しかし、目隠しを外した少年の目に飛び込んできたのは、自らの手で胸を貫かれ、血を流して倒れる最愛の師父オウガイの姿でした。
オウガイは薄れゆく意識の中、愛弟子の成長を讃え、鳳凰拳の伝承者となったサウザーを抱きしめながら息を引き取ります。信頼し、愛していた存在を自らの拳で奪ってしまったという残酷すぎる現実。サウザーの精神はこの瞬間、耐え難い激痛によって完全に崩壊しました。
「こんなに哀しいのなら……苦しいのなら……愛などいらぬ!!」
自らの心を守るため、彼は愛そのものを否定し、他者への情愛をすべて捨て去る道を選びました。聖帝十字陵という巨大なピラミッドを子供たちの強制労働によって建設させたのも、頂点にオウガイの遺体を安置し、二度と愛に惑わされないための「自らの情への決別」だったのです。