本作で観客に鮮烈な衝撃を与えたのが、太宰治を演じる小栗旬と二階堂ふみによる濃密な濡れ場およびキスシーンです。蜷川実花監督ならではの極彩色に彩られたセットと影のコントラストの中で展開される絡みは、単なる肉体の交わりではなく、「破滅へ向かう二人の精神的契約」としての重厚さを持っています。
蜷川実花監督は撮影当時の公式コメントや舞台挨拶において、二階堂ふみの現場での覚悟と瞬発力を高く評価しました。監督が求めたのは、ただ美しいだけのラブシーンではなく、相手の生命力を吸い尽くすような生々しい情念です。二階堂ふみは一切の躊躇を見せず、太宰の首元へ吸い付くようなキスや、情事を終えた後の虚ろでありながらも勝利を確信したような表情をワンテイクごとに完璧に提示し、現場スタッフを圧倒させました。
共演した小栗旬もまた、当時のメディア取材で「二階堂さんの持つ凄まじい引力に引っ張られ、太宰として本当に骨抜きにされる感覚があった」と証言しています。雨に濡れながら互いを求め合うシーンや、血を吐く太宰を抱きしめるシークエンスで見せた彼女の演技は、肉体関係を通じて太宰を現実社会から切り離し、死の世界へと誘う説得力に満ちていました。