入船亭扇遊の現在と円熟の話芸|評判・独演会チケットと人間国宝への評価

入船亭扇遊の現在と円熟の話芸|評判・独演会チケットと人間国宝への評価

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入船亭扇遊の芸を語る上で欠かせないのが、その歩んできた道筋と、師匠である九代目入船亭扇橋との深い師弟関係です。生粋の江戸前落語の正統を継ぐ扇遊のプロフィールは、昭和から平成、そして令和へと続く落語黄金期の系譜そのものを物語っています。

1953年、静岡県熱海市に生まれた扇遊は、1972年に九代目入船亭扇橋へ入門しました。前座名「扇ぽう」を名乗り、厳しい下積みを経て1977年に「扇好」として二つ目へ昇進。この若手時代から端正な語り口と正確無比な描写力は業界内外で注目を集め、1982年には「NHK新人落語コンクール優秀賞」および「国立演芸場若手花形演芸会金賞」、1984年には「日刊飛切落語会奨励賞」を立て続けに受賞するなど、同世代の旗手として頭角を現しました。

そして1985年9月、落語史に残る記念碑的な真打昇進を果たします。この時、共に真打へ昇進したのは、古今亭志ん輔、四代目桂三木助、林家らぶ平、柳家三寿、林家かん平、七代目桂才賀、林家時蔵、柳家小ゑん、春風亭正朝という、後に落語界の中核を担う錚々たる俊英たちでした。この大昇進を機に「入船亭扇遊」へと改名し、本格派としての歩みを加速させます。

師匠である九代目扇橋は、俳人としても知られ、枯淡の味わいと情の深さで愛された昭和の名人でした。扇遊は自著や当時の特番インタビュー、落語誌の回顧録において「師匠の芸は教わって真似できるようなものではなく、その生き方や風情を背中から浴びるものだった」という趣旨を述懐しています。過剰な説明を嫌い、情景を聴き手の想像力に委ねる扇橋流の「間」と「品格」は、扇遊の身体に完全に血肉化されています。

1991(平成3)年度には「入船亭扇遊独演会」の成果により文化庁芸術祭賞(文部省芸術祭賞)を受賞。さらに2018年(平成29年度)には第68回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)を受賞するなど、国レベルの顕彰によってその至芸は公的にも証明されてきました。落語協会においても要職を務め、後進の模範として確固たる地位を築いています。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。