黒死牟が消滅した跡には、ボロボロになった着物と、真っ二つに割れた一本の木製の笛だけが残されていました。それは、人間時代に巌勝が幼い縁壱に「困ったらいつでも兄上が助けに来る」と手渡したあの笛でした。
80歳を超えた老年の縁壱と再会した際、巌勝は圧倒的な実力差を見せつけられ、寿命で息絶えた弟の遺体を激昂して両断しました。その時、弟の懐から転がり出たのが、何十年も大切に袋に入れられていたこの笛だったのです。弟は生涯、兄を敬愛し続けていました。
ネット上の読者コミュニティやSNSでは、この散り際の描写に対して激しい議論と感動の声が巻き起こりました。
「憎くてたまらなかったはずの弟の遺品を、400年間肌身離さず持ち歩いていた黒死牟の業が深すぎる」
「縁壱になりたかった巌勝と、ただ兄になりたかった縁壱。完全なすれ違いが切なすぎる」
憎悪し、否定し、記憶から消し去りたかったはずの弟。しかし、黒死牟の心の奥底に最後まで残っていたのは、神に愛された弟への消せない憧憬と、かつて兄として弟を愛していた純粋な自分自身の記憶でした。