社会復帰から10年が経過した2015年6月、元少年Aを巡って再び社会を揺るがす事態が発生しました。元少年Aが「元少年A」名義で執筆した手記『絶歌(ぜっか) 神戸連続児童殺傷事件』が、太田出版から突如として出版されたのです。
手記には、幼少期の記憶から犯行に至る内面、医療少年院での生活、そして社会復帰後の日々が赤裸々に綴られていました。しかし、この出版は被害者遺族への事前の連絡や了解が一切ない状態で行われました。土師淳くんの遺族や山下彩花さんの遺族は即座に出版停止と回収を求め、強い憤りと悲痛な思いを表明しました。
さらに同年9月には、元少年Aが開設したとされる公式サイトが存在することが発覚。奇怪なイラストや文章を公開し、自身の存在を誇示するかのようなパフォーマンスを行ったことで、世論の批判は頂点に達しました。アメリカなどに存在する「サムズ・ロー(犯罪者が自らの犯罪を題材にした出版物等で経済的利益を得ることを禁止する法律)」を日本にも導入すべきだという議論が急速に高まりました。
遺族側はこれまで、土師守さんらによる手記の執筆や講演活動を通じ、加害者の自己満足的な表現活動がもたらす「終わらない精神的被害」の深刻さを社会に訴え続けています。加害者から遺族へ定期的に送られていた手紙の内容についても、形式的な謝罪に終始し真の悔悟が感じられないとして、遺族の傷を深める要因となってきました。