この町の魅力の根底には、阿蘇山系の清冽な伏流水がある。酒蔵や醤油蔵が立ち並ぶ一角からは、季節ごとに甘い醪(もろみ)の匂いや、醤油粕の香ばしい匂いが漂ってくる。
創業300年を超える蔵元「薫長(くんちょう)酒造」の敷地内に足を踏み入れると、天井の梁に染み付いた酵母の気配が肌に迫る。最近ではこの歴史ある酒粕を使った発酵ベーカリーや、地元野菜と地酒をペアリングする実験的なカフェが若い世代の手によって立ち上がり、単なる伝統の墨守にとどまらない「食の再構築」が進んでいる。古い木桶を単なる記念碑にせず、現代の胃袋を唸らせる道具として使い倒すたくましさが、この通りには満ちている。