金融機関は、親族からの連絡や死亡届の受理情報などを把握するまで口座を自動的に凍結できません。そのため、死亡から数日間はキャッシュカードと暗証番号さえあればATMで現金を引き出せてしまうのが実情です。ここに大きな落とし穴があります。
法律上、預金者が死亡した時点で、銀行と預金者との間の寄託契約は終了または権利承継のフェーズへ移行します。預金は遺言書や遺産分割協議が整うまで「共同相続人の共有財産」となり、特定の相続人が単独で処分できる権利はありません。この状態を無視して勝手に機械を操作し、現金を抜き取る行為は、法的な観点から見ると窃盗罪(刑法235条)または電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)の構成要件に該当する可能性を極めて高く含んでいます。
また、窓口で名義人が亡くなっている事実を隠し、あたかも本人の代理人であるかのように装って払戻請求書を提出した場合は、金融機関の担当者を騙して金銭を交付させたとして有印私文書偽造・同行使罪および詐欺罪(刑法246条)が成立します。「親のお金だから身内の問題だ」という認識は、金融機関という第三者が絡む取引の場では一切通用しません。