市民マラソン完走後、多くのランナーが直面するのが「写真1枚に対する心理的抵抗感」です。一般的なスタジオ写真館や証明写真機、あるいはネットプリントの価格帯(L判1枚数十円〜数百円)と比較すると、オールスポーツの写真プリントやデータ購入は数倍から数十倍の価格に見えます。この価格差が生じる最大の要因は、オールスポーツの写真の値段が高い理由の根底にある「見込み撮影(スペキュラティブ・フォトグラフィー)」というビジネス構造にあります。
通常の商業写真であれば、依頼者が事前に基本料金や撮影料を支払った上でカメラマンが稼働します。しかし、株式会社フォトクリエイトが運営するオールスポーツコミュニティの現場では、数万人規模の大会において「誰が何枚買ってくれるか分からない状態」で撮影を開始します。大会関係者への取材や業界データによると、大規模マラソンで実際に写真を購入する参加者の割合は全体の10〜20%前後にすぎません。つまり、残り80〜90%の「買われない写真」の撮影・管理コストも、購入者の商品代金によって賄われる構造になっています。
さらに見逃せないのが、現場に投入される莫大な人的・物的人的リソースです。42.195kmのコース上には、スタート、主要名所、給水所、難所の坂道、そして感動のフィニッシュ地点に至るまで、20〜50名規模のプロフォトグラファーが配置されます。彼らが携えるのは、激しい雨風や猛暑に耐え、高速で動くランナーの瞳に瞬時にピントを合わせる1台数百万円クラスのフラッグシップ一眼カメラと大口径望遠レンズです。1大会で撮影される総カット数は数十万枚に達し、その膨大なRAWデータを即座に現像・サーバー転送し、AIを駆使したゼッケンOCR(光学文字認識)や顔認証エンジンで仕分け・インデックス化するITインフラ維持費も発生します。加えて、大会主催者との独占撮影パートナーシップに伴うライセンス費用も組み込まれているため、単なる「紙代・データ送信代」とは全く異なる価格体系が形成されているのです。