今回独自に入手した詳細な海洋気象予報の解析データは、鹿児島の海がいかに局所的な危険を孕んでいるかを冷徹に物語る。鹿児島湾(錦江湾)内部では波高0.5メートル前後の平穏を保っていても、湾口部から外洋へと抜けた瞬間、東シナ海側では1.5メートルから2メートル超の鋭角な風浪が船腹を叩く。閉ざされた湾内と外洋を結ぶ水道部では、潮流と波浪が衝突して激しい白波が立ち、操船の舵を奪う。
さらに警戒すべきは種子島沖だ。外洋からダイレクトに押し寄せるうねりは周期が10秒を超え、公称の波高データが2メートルであっても、水深が急激に浅くなるリーフや砂州の先端では突発的に3メートル以上の崩落波へと化ける。波と波の間隔が長いロングピリオドのうねりは、目視では穏やかに見えても質量とエネルギーが段違いだ。航海中の船舶だけでなく、沿岸の岩場に立つ釣り人をも一瞬で海中に引きずり込む破壊力を秘めている。