「緩みが怖いから限界まで力任せに締め上げる」という行為は、現場において最も危険な素人作業です。そこにはターンバックル締めすぎによる破断リスクが潜んでいます。
金属ワイヤーは張力を受けると弾性変形によってわずかに伸びますが、締め込みすぎると材料の降伏点を超えて「塑性変形」に突入し、最終的には素線が一本ずつプツプツと断裂していきます。特に注意すべきは「温度変化」です。夏場の炎天下でパンパンに張り詰めたワイヤーは、冬場に気温が氷点下近くまで下がると熱収縮を起こし、自己張力が跳ね上がります。その結果、ある日突然ターンバックルのネジ部がせん断破壊を起こして吹き飛ぶか、アンカーボルトが壁ごと引き抜かれる大事故に発展します。「指で強く押した際にわずかに弾力(たわみ)が残る程度」にとどめるのが、プロが守るテンションの安全域です。
一方で、改修時や張り替え時に必要となるターンバックル外し方と緩め方のコツも知っておく必要があります。高張力がかかった状態のターンバックルを無計画に外そうとすると、急激なテンション解放によって胴体が激しく回転し、工具が跳ねて指を骨折する危険があります。
緩める際は、いきなり本体を逆回転させるのではなく、まずワイヤープーラー(シメラー等)でワイヤーを一時的に引き寄せて張力を一時的に逃がしてから、フリーになったターンバックルを回すのが鉄則です。もし屋外で長期間放置され、ネジ部が赤サビで固着している場合は、ラスペネ等の強力浸透潤滑剤をスプレーして15分以上静置し、金槌で胴体のネジ部外周を軽く叩いて衝撃を与えてから、2本のレンチを使ってテコの原理でゆっくり緩めていきます。