何度も見返したくなる中毒性を生み出しているのが、第一線で活躍する気鋭の脚本家が幾重にも張り巡らせた伏線の妙だ。劇中で何気なく交わされる朝食のメニューや、古い軽自動車の助手席に置かれた傷だらけのトイカメラ。一見すると日常の一コマに過ぎない描写が、クライマックスに向けて巨大な感情のうねりとなって回収されていく構成は圧巻の一言に尽きる。
特に賛否両論を巻き起こしたあのラストシーンについては、配信開始後の今こそ再検証されるべきだろう。主人公が最後に放った一言の意味、そしてバックミラー越しに見つめ合う二人の視線の先にあるもの。専門家の間でも解釈が分かれるこの結末は、観る者の境遇や家族観によって全く異なる色彩を帯びる。一時停止や巻き戻しが可能な配信環境だからこそ、細部に散りばめられた演出の意図をじっくりと咀嚼したい。