大手映画会社の忖度や興行規模の圧力とは一切無縁の場所で決定されるのが、東京映画記者会による選考の最大の魅力だ。毎年秋から冬にかけて開催される選考会議では、各紙のベテラン記者が自らの美学とプライドを懸けて怒号混じりの議論を繰り広げる。2026年最新の選考でも、最後まで1票を巡って意見が真っ向から対立する大激論が巻き起こった。
特に議論が白熱したのは、圧倒的な映像美で観客を平伏させた大作と、自主制作に近いアプローチで人間の業を描ききった小品との評価の衝突だ。「映画館のスクリーンを救った功績」を称える声がある一方で、「日本語の台詞と佇まいだけでスクリーンを支配した演技の本質」を推す声も譲らない。結果的に票は割れに割れ、数回の再投票を経てようやく決着を見たという。この選考のドラマチックなドタバタ劇こそが、本賞が長年にわたり映画人に愛され、また恐れられる理由そのものなのだ。